階級も世代も越えて竹刀を交える。海上自衛隊「月例合同稽古」の道場へ

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「海上自衛隊の剣道の稽古」と聞いて、皆さんはどんな光景を思い浮かべるでしょうか。
自衛隊の剣道と聞けば、さらに張り詰めた空気と厳格な稽古が待っているものだと思っていました。しかし、取材で目にしたのは、そんな先入観を鮮やかに覆す光景でした。

階級を超えて、一人の剣士として

厳しい暑さが立ち込める体育館。竹刀が激しく交わる音と鋭い気合が、張り詰めた空気を震わせます。
海上自衛隊第2術科学校(横須賀市田浦)では、週2回、剣道の稽古を行なっています。
月に一度、「月例合同稽古」が行われ、現役隊員をはじめOBや地域の剣士たちが集い、ともに汗を流しています。

◾️海上自衛隊第2術科学校
昭和27年4月26日、海上自衛隊の前身である海上保安庁海上警備隊は、司令部が置かれた横須賀市田浦で誕生しました。昭和28年9月16日、警備隊術科学校が発足、昭和29年7月1日には海上自衛隊術科学校となり、この地で自衛隊に必要な専門知識や技術(術科)の教育が最初に行われました。
現在は、術科ごとに専門教育を行う学校が全国にあり、第2術科学校では、機関、情報、技術、外国語などの教育を担当しています。

現役・OB・子どもたちが集う道場

月例合同稽古には、現役の隊員はもちろん、海自OBで結成され30年以上の歴史を持つ「群青会(ぐんじょうかい)」の大先輩方、入隊したばかりの「教育隊」の若手隊員、さらには剣道を習う子どもたちまでが幅広く顔を揃えます。幹部から海曹士まで、老若男女問わず一人の剣士として参加し、一緒に同じ汗を流しています。

「剣道は人間関係そのもの」と笑顔で語る米海軍OBで剣道7段の腕前を持つ方も参加していました。

強さは、基本から生まれる

準備運動で体を慣らした後、素振りを行います。
「面!面!面!」
全体に、腹の底から絞り出すような気合いが響き渡ります。

すっと伸びた背すじと無駄のない構え。長年の修練で培われた品格が滲み出ており、一瞬の隙も許さない濃密な緊張感が一気に高まります。構える手元から繊細な足さばきに至るまで、研ぎ澄まされた集中力が満ちていくのが肌で伝わってきます。

一斉に面を着けると、道場の空気が一段と引き締まります。

体育教官によるきめ細やかな指導

基本稽古がスタートしました。打突の軌道や足さばきを一つひとつ丁寧に確認し、基本動作を繰り返していきます。

全体の指導にあたるのは、第2術科学校の体育教官です。
身体の仕組みや運動理論に精通した“体育のプロ”ならではのアドバイスは、分かりやすく、思わず「なるほど」と頷いてしまうものばかりでした。

静寂を切り裂く、一瞬の攻防

体育館内に満ちる凛とした空気の中、いよいよ緊張の地稽古が始まりました。踏み込みの足音と鋭い気合が響き渡ります。

互いに竹刀を交え、ジリジリと間合いを詰めながら機をうかがいます。相手のわずかな隙や動作の「起こり」を見逃すまいと、一瞬たりとも視線を外さず攻め合う両者――。張り詰めた緊張感が、道場全体を包み込みます。

「パーン!」

静寂を切り裂く鋭い打突音。一瞬の隙を逃さず踏み込んだ面打ちが、元立ちへ真っすぐに放たれます。しかし、受ける先生も一歩も引きません。竹刀で確実に受け止め、堂々たる構えを崩すことなく応じます。竹刀と竹刀が激しくぶつかり合い、乾いた打突音が道場いっぱいに響き渡ります。

踏み込みと同時に床を鳴らす力強い足音。その一歩一歩には、積み重ねてきた稽古の成果と、相手に立ち向かう強い気迫が込められていました。
技と技、そして精神と精神が真正面からぶつかり合う熱気あふれる稽古が続きます。

高い昇段実績を支える、妥協のない指導

この日は、昇段審査を目前に控えた隊員たちを対象に模擬審査も行われました。
海上自衛隊の道場は、昇段率の高さでも知られています。
高段者のOBが、本番さながらの視点で一人ひとりを見つめ、改善点を丁寧に伝えていきます。

打突後の竹刀の収め方、別れ際の足さばき、そして残心。
一つひとつの所作を、本番さながらの厳しい目で細かく見極め、的確な指摘が飛びます。

技術だけでなく、心構えにも妥協を許さない指導。
こうした緊張感のある稽古の積み重ねが、高い昇段実績につながっていることを感じさせる模擬審査でした。

竹刀がつなぐ、一生の絆

「群青会」は、70歳以上の部で幾度も優勝を果たしてきた青木会長を中心に、退職後も現役隊員を精神面・技術面の両方から支える強い絆を築いています。

真夏の厳しい暑さの日も、凍える冬の朝も、この道場に集う人たちの熱意は変わりません。日々の稽古を通して育まれる信頼と連帯感は、任務に臨む隊員たちを支える大きな力となっています。

第2術科学校の道場に響く竹刀の音。
その一打には、技を磨くだけではない意味が込められていました。

現役隊員とOB、そして防衛大学校で剣を学んだ先輩と後輩。立場や世代を超え、一人の剣士として互いに鍛え合い、敬い合う――。その積み重ねこそが、この道場に受け継がれる剣道の精神であり、国防という任務に就く自衛官たちの確かな支えになっているのでしょう。

合同稽古に興味のある方は海上自衛隊第2術科学校までお問い合わせください。

取材日: 2026/7/24

海上自衛隊第2術科学校
神奈川県横須賀市田浦港町無番地
公式HP
取材協力:海上自衛隊第2術科学校

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