《現地レポ》涙と祈りの「帽振れ」―護衛艦「たかなみ」中東海域へ出港

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令和8年6月6日。容赦なく照りつける初夏の日差しの中、横須賀地方総監部 逸見岸壁は、出発を待つ隊員たちと、その無事を祈る見送りの人々の熱気に包まれていました。

今回、中東のソマリア沖・アデン湾などでの海賊対処や情報収集を目的とした「第54次派遣海賊対処行動水上部隊」として出国するのは、青木崇(あおき たかし)2等海佐が艦長を務める護衛艦「たかなみ」です。乗り込むのは、188名の海上自衛官と8名の海上保安官です。

行ってきます!応援を胸に

長さ151メートルの護衛艦「たかなみ」は、カメラのフレームには到底収まりきらないほどの大きさです。

出港前の岸壁では、「行ってきます!」と仲間同士で声を掛け合い、護衛艦をバックに笑顔で記念撮影をする隊員たちの姿がありました。

その傍らには、ずらりと並べられたベビーカー。小さなお子さんを抱きしめるご家族たちが、会えない時間を少しでも埋めるかのように、言葉を交わしています。

空気が一変した、厳かな式典

真っ白な制服に身を包んだ隊員たちが整列した瞬間、現場の空気はキリッと引き締まりました。出国行事の始まりです。

統合作戦司令部司令官の訓示では、向かう任務の過酷さを浮き彫りにしました。今年2月からのイランを巡る情勢悪化や、4月以降のイエメン沖での実際の船舶被害などに触れ、海賊事案が前年を上回るペースで増加している現実が突きつけられます。

年間約1800隻もの日本関係船舶が通過するアデン湾。その大動脈を守り抜くことは、「我が国の繁栄と国民生活を支える海上交通路の安全、社会の安定を確保する極めて重要な任務」であると力強く語られました。そして隊員たちの背後で見守るご家族に向け、「隊員が職務に専念できるのは、ご家族の理解と支えがあってこそ」と深く感謝を述べ、自衛隊や海上保安庁が組織一丸となって留守を預かるご家族をサポートしていくことを約束しました。

海上自衛隊と海上保安庁の連携

海賊対処行動において海上自衛隊と海上保安庁が連携する理由は、両者の「能力」と「法的権限」を補い合うことにあります。

海上自衛隊は民間船舶を守る「護衛能力」を持っていますが、海賊を犯罪者として適法に逮捕する「警察権」を持っていません。一方で海上保安庁は、犯人を逮捕し取り調べる「警察権」を持っていますが、重武装の海賊が頻出する危険な海域において、単独で長期間の護衛を行う能力や装備には限界があります。このため、「海自の強力な護衛力」と「海保の適法な警察権」を組み合わせることで、初めて民間船を安全に守りつつ、法に基づいて海賊を適切に取り締まることが可能になるという法的な背景があります。

「第54次派遣海賊対処行動水上部隊、出国します!」
青木艦長の力強い出国報告が響き渡ります

横須賀音楽隊の行進曲「軍艦」の演奏のなか、隊員たちが次々とタラップを登り、艦へと乗り込んでいきます。見送る人々からは、割れんばかりの拍手が送られました。

無事を祈る「帽振れ」、涙の出港

いよいよ出港の時です。 岸壁には、「貴艦の安航を祈る(I wish you a pleasant voyage.)」という安全の願いが込められた「U旗」と「W旗」の2枚の国際信号旗を振る女性の姿もありました。

「おとうさーん!おとうさーん!」

甲板に立つお父さんに向かって、小さな体で一生懸命に呼びかけるお子さんの声が響きます。こらえきれず泣き出してしまうお子さんや、ちぎれるほどに手を振るご家族たちの姿に、胸が締め付けられます。

「帽振れ(ぼうふれ)ー!」

号令とともに、岸壁からゆっくりと離れ始めた「たかなみ」の甲板で、隊員たちが一斉に帽子を大きく振り始めました。岸壁のご家族や関係者も、帽子や手を激しく振り返してそれに応えます。海と陸とで交わされる、海上の伝統的で最も感動的な別れの挨拶です。

船はゆっくりと岸壁を離れ、やがて白い波しぶきを上げて一気に沖へと進み始めました。船影が小さくなっても、見送りのご家族はずっと艦を見つめ、手を振り続けていました。

護衛艦「たかなみ」に乗り込んだ隊員たちは、お子さんを抱っこし、家族との時間を大切にする、「お父さん」や「彼氏」「息子さん」たち。
日本から遠く離れた海で、今この瞬間も日本の船を守ってくれている人たちがいる。無事に任務を終え、再び愛する人と笑顔で会える日を心から祈っています。

護衛艦「たかなみ」について

出典:海上自衛隊ホームページ

【主要要目】
基準排水量 4,650t
主要寸法 長さ 151m、幅 17.4m、深さ 10.9m、喫水 5.3m
主機械 ガスタービン4基2軸
馬力 60,000PS
速力 30kt
主要兵装 高性能20ミリ機関砲×2、54口径127ミリ速射砲x1、VLS装置一式、3連装短魚雷発射管×2、SSM装置一式、哨戒ヘリコプター×1

引用:海上自衛隊ホームページ

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