陸・海・空の垣根を越えた「サイバー戦士」たち「サイバー防護要員」の育成現場に密着

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日本の防衛の最前線、それは今や「陸・海・空」だけではありません。第四の戦場と呼ばれる「サイバー空間」。
今回、神奈川県横須賀市にある陸上自衛隊・久里浜駐屯地にて、知られざる「サイバー防護要員」の育成現場に潜入しました。そこには、肉体を使う訓練とは一味違う、しかし同様に熱く、過酷な「30日間の闘い」がありました。

「自衛隊最古」の地が、日本の「最先端」へ

横須賀市久比里。ここに、自衛隊ファンならずとも知っておくべき場所があります。
昭和14年(1939年)に旧海軍通信学校として開設された、自衛隊最古の歴史を持つ「久里浜駐屯地」です。
2024年3月、長年親しまれた通信学校は「陸上自衛隊システム通信・サイバー学校」へと改編。旧海軍時代からの歴史を継承しつつ、現在は日本の防衛における「システム・ネットワーク・サイバー」の総本山として、最先端の教育が行われています。

なぜ、今「サイバー防衛」が急務なのか

画像:防衛省サイバー防衛隊HPより

現代社会において、サイバー攻撃への対策は国家の安全保障に直結する重要課題です。スマートフォンやIoT機器の普及により攻撃の窓口が拡大しており、ひとたび攻撃を受ければ社会インフラの停止など甚大な被害を招く恐れがあります。

サイバー攻撃とは、情報通信ネットワークを悪用した「不正侵入」「情報の窃取」「データの改ざん・破壊」「システムの動作停止」などの総称です。軍事領域においても、情報の集約を妨げ、作戦立案を阻害する深刻な脅威となっています。従来の武力攻撃(ミサイルや銃撃)とは異なり、サイバー空間には以下の特異なリスクが存在します。

匿名性の高さ: 踏み台を経由するため、攻撃者の特定が極めて困難である。
物理的距離の無効化: 地球の裏側からでも瞬時に、かつ国境を越えて攻撃が可能。
攻撃側の圧倒的有利: 手口が巧妙化しており、攻撃を受けている事実にすら気づかないケースが多い。

自衛隊では、2022年に「自衛隊サイバー防衛隊」を新設しました。サイバーの中核要員は23年度には620人ほどの体制で、27年度末までに自衛隊サイバー防衛隊や陸海空の自衛隊の人員もあわせておよそ4000人に増やす計画です。

「レベル2」という登竜門――30日間の濃密な闘い

自衛隊といえば、多くの方は厳しい自然の中で体を張る、肉体的な訓練を連想されるかもしれません。しかし、ここで実施されているのは、日本のネットワーク防衛の根幹を担う「サイバーセキュリティ」の基礎教育です。そのカリキュラムは、驚くほど濃密な内容で構成されています。

「この教育は、サイバー防衛のスペシャリストとしての門出です。コンピュータサイエンスの基礎理論から始まり、最終的にはサイバー攻撃への対処の基礎レベルまでを体系的に教育します」

IT業界では一般的に「IPA(情報処理推進機構)」のITスキル標準が知識の指標とされますが、自衛隊の教育は、その知識を「防衛という任務」に結びつけた実践に主眼を置いています。知識の習得に留まらず、国家の安全を脅かすサイバー攻撃に対し、いかに論理的かつ的確に対応するか。その「思考の土台」を30日間で徹底的に作り上げます。

陸・海・空 制服の色が混ざり合う「統合」の現場

教室に入ってまず目を引くのは、陸・海・空という組織の枠を超え、異なる制服を着た隊員たちが一つの目標に向かう姿です。サイバー攻撃に、陸も海も空も関係ありません。だからこそ、守る側も「統合」して戦わなければならない。この教室は、まさに日本の防衛力が「一つ」になる瞬間を象徴しているようでした。

「攻撃者は常に新しい方法を考えてくる。だからこそ、実務的な技術、ハンズオン(体験学習)が重要です。失敗して、仕組みを肌で感じる。それが実戦対応への最短距離です」
教官が一方的に話す座学ではなく、アクティブラーニングを取り入れ、隊員同士が教え合い、グループワークで課題に取り組みます。
知識や技術力のバックグラウンドが異なる隊員たち、そこには、階級や所属を超えた「仲間」としての絆が生まれていました。

さらに、この教育の真髄は、日本を代表するセキュリティ企業などと連携し、「最新の技能」にアップデートし続けている点にあります。
自衛隊のサイバー教育は、自衛隊内外の教育、部隊でのOJT、留学等を経験し、レベルを向上させています。

あなたの技術が、日本の未来を守る力に

日本の防衛は今、大きな転換期を迎えています。陸・海・空という従来の領域に加え、第四の戦場である「サイバー空間」の守りを固めることは、国防はもちろん、社会インフラや国民の生活を守るための最優先課題です。
「陸上自衛隊システム通信・サイバー学校」では、その中核を担う人材の育成が着実に行われています。知性とITスキルを武器にして国を守る「サイバー防護要員」は、これからの日本の安全保障を支える柱です。

「自分の技術を、国家の安全という誇りある仕事に役立てたい」という強い志を持つ方にとって、自衛隊は最先端の技術を学び、成長し続けられる唯一無二のフィールドとなるはずです。
日本の未来をデジタルで守るという、任務に少しでも興味を持たれた方は、ぜひ公式ホームページをご覧ください。

陸上自衛隊 久里浜駐屯地
システム通信・サイバー学校

神奈川県横須賀市久比里2-1-1
TEL 046-841-3300
公式HP

神奈川地方協力本部

公式HP

取材協力:陸上自衛隊 久里浜駐屯地システム通信・サイバー学校

※この記事は、2026年3月31日にYahoo!ニュースへ寄稿・掲載したものを再掲したものです。

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