令和8年4月9日、海上自衛隊横須賀教育隊において、歴史的な瞬間が幕を開けました。この日挙行されたのは、新設された「第1期幹部候補海曹課程」の入隊式です。緊張した面持ちで整列したのは、49名の新入隊員たち。
海上幕僚長からのメッセージ、多数の来賓、そして誰よりも彼らの背中を押し続けてきた家族が、温かく、力強く見守りました。
安全保障環境の変化と新制度創設の背景
近年、中国、ロシア、北朝鮮による軍事活動の活発化や連携強化により、日本を取り巻く安全保障環境はかつてなく厳しさを増しています。さらに、国内における少子高齢化が進む中、将来にわたる防衛の人的基盤を安定的に確保することが急務となっています。
こうした状況に対応するため、多様な人材を確保し、高度化・複雑化する任務に的確に対応できる幹部自衛官を育成する目的で創設されたのが「幹部候補海曹課程」です。この日入隊した第1期生たちは、海曹として一定の経験を積んだ後、幹部候補生学校へ進み、将来の幹部となることが予定されています。

緊張と高揚が交差する式場


桜が咲き終わり、若葉が芽吹き始めた4月9日。入隊式を祝福するかのように、空は晴れ渡り、やわらかな陽光が会場を包んでいました。横須賀教育隊には、伝統の7つボタンの制服に身を包んだ隊員たちと、その家族が集い、式の開始を静かに待っていました。
海上幕僚長の到着とともに、会場の空気が一段と引き締まる

来賓が着席し、静寂が広がる中、海上幕僚長・齋藤聡海将が到着。栄誉礼が厳かに行われると、式場は一気に引き締まりました。


昇任申渡および幹部候補海曹任命、海上自衛官任命ならびに教育入隊命令。ひとりひとりの名前が読み上げられるたび、力強い「はい!」という声が響き、隊員たちは一斉に立ち上がります。その動きには、迷いがありません。
静まり返った会場に、宣誓の力強い声がまっすぐに響き渡りました。
橫須賀教育隊司令式辞
横須賀教育隊司令 大賀康弘1等海佐による式辞には、海に生きる者としての深い教訓と、これから過酷な訓練に挑む若者たちへの温かい親心が込められていました。

「過度に緊張することなく、まずは海上自衛官としての精神的基盤を築いてほしい」
幹部を目指す立場であっても、焦る必要はない。基礎を一つひとつ積み重ねることこそが、将来を支える礎になる——その言葉は、これから厳しい訓練に臨む隊員たちの背中を、そっと押すようでした。
続けて紹介されたのは、船乗りの教えです。
「船乗りにとって一番大事なことは、自分の位置を知ること。自分の船の位置が分からない時は、まず船を止めよ」
進むべき方向を見失ったとき、無理に進まず、いったん立ち止まる。その冷静さこそが、海でも人生でも求められる。会場には、その意味をかみしめるような静けさが広がっていました。
海上幕僚長が託した「2つの願い」と「7つボタンの誇り」
続いて登壇した海上幕僚長 齋藤 聡海将 の言葉には、厳しさを増す安全保障環境への危機感と、新たに始まる制度への強い期待、そして第1期生への熱い激励が込められていました。

「初心を忘れず、誠実に取り組んでほしい」そして「同期との絆を大切にしてほしい」
全国から集まった仲間と寝食を共にし、同じ目標に向かう日々。その中で築かれる信頼関係は、やがて何にも代えがたい財産になると語ります。
さらに言及されたのが、約20年ぶりに復活した「7つボタンの制服」です。
限られた者だけが身にまとうことを許された伝統の象徴です。この横須賀での経験は、その制服とともに、誇りとして心に刻まれていく——その言葉には、未来へのまなざしが込められていました。
結びに、「国民の信頼を背負い、理想の実現に向けて突き進んでください」と、激励が送られました。
新たな航海のはじまり


海上幕僚長や横須賀教育隊司令が託した熱い思い、来賓からの大きな期待、そしてご家族の温かいまなざしと祈り。
数え切れないほどの愛とエールを帆に受け、歴史的第1期生は今、希望に満ちた大海原へと力強く出港しました。

幹部を目指すという志、そして国を守るという強い思い。その真剣さに、いつも胸を打たれています。どうか体に気をつけて、応援しています。
取材日:2026/4/9



